| 大豆作りと地域振興 日本地豆腐倶楽部専務理事 いづみ産業求i=豆の力屋/大分市)代表 庄司憲一 私共「豆の力屋」だけですと、年間で大豆三〇`袋二千本程度ですから、とてもじゃないですけど地域振興のち≠フ字にもならないですね。でも、これが五万袋にまでなってくると、完全に地域振興(の域)に入ってきます。こうやって(地豆腐倶楽部の)六社も大豆・・・いい大豆を引いてるわけじゃないと思うんですよね。多分、これからだろうという風に思っています。最初はやっぱり、ちょっとまがい物くさくて、僕と東田会長で「直接入札すると安いぞ」という話で、だいたい実はいたんですね(笑)。で、「問屋はないけど、なんとかなるわ」と、物流から何からだんだん整備していって、今はかなりシステム的になっています。問屋さんも中に入れてますし、うちも商売なんで、全農さんも入れてやって、なんとなくシステム化できたかな、と思ってます。あとは品質の問題なんですが、お恥ずかしいんですけれど、やっぱり大分の大豆は、農業的な評価でいくと大の一等は欲しいんですけれど、なかなか気候的な問題があってできない。とくに中山間地は中粒が多いんですよね。で、豆腐屋さんとしては今から、大分(の農業)がこれに応えきることができるか、というのが始まった年だと思っています。実は、六社の豆腐屋がやったことは、まぁ、買い付けというところでさっきも言いましたが、いい大豆を買ったわけじゃない、地域の取り組みを買った、というところがあります。ホント、大分県を代表してお礼を言いたいんですが、おかげで今、減反政策というのが平成十六年までありますが大分の場合、やはり九州の米どころではないんですね。(大分は)米も随分作っていますが、東北あたりが本気で減反を止めてくると、九州はほとんど畑地だろうと。土壌の分析からいくと茶畑なんですね。で、お茶もそんなには飲まないわけで、じゃあ何を輪作にしていくのか、やっぱり、米と麦と大豆を三分の一ずつ輪作していかないと生きていけない土地なんですね。で、その三分の一を占める大豆をほとんど全量という形で、地域で買い上げることができた。これはもう、豆腐屋さんの売買とかいう器ではなくて、行政レベルです。平成十六年から農業政策が変わります。大分の場合は大豆と麦で契約的な実需がないと、おそらく交付金が非情な勢いで減っていきます。で今回、地豆腐倶楽部が全域に(契約の)網をかけましたんで、畑地作り形成研究給付金=新たな政策の基金でもって、網をかけることができています。この人数が、おそらく千五百名。この千五百名の方の農業的な所得を、ある意味で保証ができたということ。闇雲に(大豆を)作るんじゃなくて、それぞれ産地を分けてますから・・・例えば、東田会長の集落は集落で囲ってますから、その方々との直接の交流ができてる。農業の場合は、米に限らず麦に限らず全てなんですが、直接使われる方が産地に入って話をするなんて、まずないらしいです。僕らはその発想がなかったんで、ズカズカ入っていきましたね。これは、どの集落に行ってもびっくりされます。で、必ずそれに行政がついてきてくれて、産地の形成をやってくれたということです。三年間くらいやったんですけど、今年に七月には総工費約二億円という形で、大豆の加工施設ができます。内訳はおそらく、豆乳工場になるだろうと思います。これをやりますと、ここがいよいよ、商品化のための大豆作りを町ぐるみでやることができます。今、全国的に「エコ・ファーマー」という申請をしています。実は大産地である宇佐市は、(生産面積が)約一千ヘクタールあります。一ヘクタールがだいたい三千坪だと思ってください。これだけあると広範囲の人間が入っていますし、この土壌を全て改良するというと、随分時間がかかると思うんです。でも、農業にとって土地は工場みたいなもので、それにお金をかけないというのは、今後は多分無理だろうと思うんで、実は壮大な量なんですけど実験が始まっています。去年は、山下ミツ君のところの四十ヘクタール分の土地に、だいたい一反当たり一万八千円、総額で約七百万円を投入して土壌改良しました。農家と僕と研究所で折半というすごいリスクです。その結果は一四〇%増でしたね、単収が。(研究所は)多分、二〜三年これをやると土が元に戻るんじゃないかと言ってます。当然、土壌の改良剤プラスαが要りますけど。大豆を穫るだけじゃなくてその前=土のデザインまで大規模にやらなきゃいけないなと。そのためには多くの資金が必要だったり研究所とのタイアップが必要だったりするんですけど、五万袋という流通が入っている以上、そこまでの立場をとろうかと思う・・・と、思おうかじゃなくてやってます。 東田 ありがとうございます。結果としてうち等も大分から大豆引っぱって、彼の言うとおり、正直もの足らん部分も多々感じます。けど結局、行く行く何が欲しいんかというと、やっぱり生産者の顔≠ニいう部分です。日本の物流で一番欠けている部分は、例えば、スーパーに行けば商品はいっぱいあるけれど、「実際これ、誰が作ってるの?」って見たときに、作り手の顔が浮かばないしスーパーの人に聞いても何も分からない、というのが現実ですね。そ一番大事なものが、だんだん失われているんだなぁと感じました。今後、大分もどうなるかはっきりは分かりませんけれど、彼の言うとおり平成十六年、がんばってやってもらいたいな、いいものが出るやろな、ということで付き合っていきたいと思っています。 山下 ここにお集まりの方の中にも契約栽培をさせている方も結構いるかと思うんですが、うちも駒ヶ根(長野県)で数十俵、頼んでいるんですけど、契約栽培の場合ですと、必ずしも満足のいく味が出ないことが多々あるかと思うんですが、そういう場合に皆さんは、どのように処理しているんでしょうか?うちの場合もやはりムラがありまして、他の大豆を使うしか仕方ないような場合が結構ありまして、(卸先が)料理屋さんの場合は、こうでないと生きていけないということで、他のでごまかしたりしてるんですが、皆さんどうでしょうか? 三好 同じ国産大豆で、まぁ地域でどこの物というのがはっきり分かるものであれば、多少はそういう(他の大豆を使う)こともあります。 山下 産地とか生産者の顔がはっきりしているということは、消費者から見れば、とても大きなセールスポイントではあるんですけれど、料理人というのはシビアで、「それだけじゃダメだ」ということが多々ありまして私は、契約の方を犠牲にして、味の方を優先して作ったりするんですが・・・。 渡邉 私は、地元の大豆を使うということで、敢えて品質にこだわらないで地元の大豆を優先的に使ってるんですよ。しかも値段も、プレミアムをつけて高く・・・今、キロ当たり二百六十円になってます。交付金の大豆だとキロ百五十円くらいで買えるんですけど。(地元を)二十`も離れると熊谷市で、熊谷市の大豆には交付金制度がありますので、三十`cで四千円かそこらで買えます。でも敢えて、自分の住んでいる近くの大豆は、農家の人と交渉して、交付金制度を受けられない小規模の産地なので、再生産の利く値段ということで今、キロ二百六十円で買い付けています。品質は、そんなに良くはないです。県の普及所に指導を任せて、また選別なども立ち会ってもらって、検査品ではないんですが、そうしたものは全量買う、と。ただ小粒についてはかんべんしてもらう、ということで買ってます。だから、うちの豆腐はそれほど美味しくはないと思っています。ですが地産地消で、要は素性の分かる豆腐ということでやってるんですが、農家の方の顔写真を貼り出して売るというところでお客さんの理解を得て、(お客さんが)たくさん来てる、というところなんですね。私は、品質というものは豆腐の味だけで決まるんじゃなくて、大豆の生産者の顔から製造する人の顔から売り場の人たち、あるいはクレーム処理なども含めて、品質として考えているので、地域の大豆の品質が悪くても、それも一つのブランドだと考えて、敢えて使っています。 日本地豆腐倶楽部理事 挙、光(横浜市)社長 澁谷弘三 今の意見に近くて重なる部分もあるんですけど、(うちは)実は今年から、大分の大豆が九七%くらいになったんですよ。それって何で決めたかというと、先々月に産地に行って産地の方といろんな話をしたときに思ったのが、「我々って豆腐を作ってる。それは毎日毎日、昨日出来が悪かったら明日はこうしよう、また次、こうしようよって、一年の中で三百六十五回洞察があったり、変更ができる。だけど農業は、一年という単位の中で変更があって、取り組んでる」と。すごく当たり前のことなんですけど、現場(産地)に行ってすごくよく分かったんです。そのときに自分自身で決めたんですけど、「悪いときがあっても続けて付き合っていかないと、本当にいい大豆って手に入らないんだなぁ。だったらその取り組みをお客さんに伝えていくしかないな」と腹括りました。で、腹括ると結構楽で、もしかしたら離れていくお客さんもいるかもしれないけれど、ついてくるお客さんもいるんじゃないか、というところで、産地に行って関わっていきたいな、と今は思っています。 渡邉 ちょっといいですか? 東田 どうぞ。 渡邉 農家の方々と付き合う中で一つ、感じたことがあるんですけど、農家の方には「大豆を高く売りたい」という気もあるんですけどもうひとつ、農家の方の喜びっていうのはどういう人に自分の作った大豆をつかっていただくか≠ナ、これを知りたがってるんですよ。農協の選果場に持っていって、JAを通して全国に売るのもいいんですけど、農家の人は本当は、自分が一年間・・・そう、手塩にかけた娘と同じで嫁ぎ先、どんなところで使っているのか知りたがってるんですね。我々もそうだと思うんだけど、自分が作った豆腐をね、食べてくれるお客さんの顔を知りたいわけですよ。これも(先の発言に)付け加えさせていただいて・・・ 冨田 僕も、去年の四月から大分の大豆を使ってるんですけど、で、お豆腐を農家の方に持っていったんですよ。それまで、その農家の方って大豆を作ってるだけで、それが商品になって帰って来るってことはなかったみたいで、食べたら「こんなに美味しいんだ」と。だったら、「もっと手塩にかけたら、どんな豆腐ができるんだろう?」という会話があって、それに僕はすごく感動した、ということがありました。それをうちに帰ってお客さんに話したりすると、お客さんも喜んでくれて、またお客さんを連れてきてくれる。だから本当に、お豆腐の中に一から十まで顔が見える、というのに大切にこだわっています。 「遊心」会員 埼玉屋本店(東京都葛飾区)店主 新井弘幸 ちょっといいですか今の・・・地豆腐倶楽部の大豆の取り組みとか、豆が悪いときでも仕方なく使わなくちゃいけないとか、そういうのもすごく分かるんですけど、私の個人的意見として、例えば、目の前にある大豆を使えば美味い豆腐ができるのが分かっているのに、しかたなくこっちの大豆を使って豆腐を作るってことは絶対できないですね。お豆腐を買うのはお客さんです。お客さんからお金を貰うんです。だったら、せっかくいい大豆が目の前にあるのに、こっちの(悪い)大豆は使えないです、作る側の人間として。経営は下手です。相変わらず貧乏ですから。 山下 基本的に私たちは、農家の応援団じゃなくてはいけないと思ってるんですが、私の契約先に限って言いますと・・・これって平均的なのかな、大豆の質よりも「単収いくら」ばかり言ってて、いっぱい収穫することばかり考えてるような感じなんで、こっちが買う立場なのに。だから叱ったりするんですけど(笑)。だから、なんていうのかなぁ、先ほどの埼玉屋さんの意見というか、この辺になると「素性が分かればいい」というタイプと「美味くなければ許さない」というタイプと。これは生き方の問題で、どうしようもないと思います。ですが、どっちのタイプの人間も、この国にとっては宝物で、それぞれ認めてあげなくてはならないことだと思います。どっちを選択するかは、その人の好みということで、みなさんがばってくれ!ということですね(笑)。 渡邉 うちは今までは、埼玉ではタチナガハが一番作り易いということで「タチナガハでいいよ」とお願いしていたんですが、タチナガハは、実が結構高い位置につくので、刈り取りのときにコンバインが入れ易いんですが、もうそろそろ「タチナガハでは勘弁できないよ。そろそろ私が指定する大豆に替えてくれ」と言って、今年は全面的に大豆の品種切り替えを考えています。この間、京都に行きましたら、京都の豆腐屋さんで、滋賀の「みずくぐり」という大豆を使っているところがあって、「(コストが)キロ三百円くらいだけど、これを入れると豆腐が美味しくなるんだよ」という話を聞きまして、うちの方は狭い産地なんで、その大豆じゃないんですけど埼玉に適した、もっと糖質の高い大豆を今年はお願いしようと思います。そういうやり方もあると思うんですけど。 東田 ありがとうございます。大豆についていろんな話が出てますけど、「地豆腐」と「遊心」だけじゃなくて、他のご参加の皆さんも大豆についてこう、聞きたいことがあるとか、いかがですか? 冨田 今まで大豆の話だったんですけど、僕は「にがり」の部分も興味があるんですが、皆さんは、にがりはどうされているのかなぁ・・・と思って。ま、いろいろだとは思うんですけど、何かこう「変わってる」とか「これ面白いよ」とかあったら、教えて欲しいんですけど。 |